むっつり助平ギルド
むっつり助平をモットーに(?)世間的にはマイナーな自分的萌えジャンルに愛をそそぐヲタログ
※このブログは個人による趣味のための二次創作表現を含みますが、あらゆる原作・公式な団体とは関係ありません。全内容無断転載厳禁。※
[PR]
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
||
誕生祭
お誕生日おめでとうございます!
天王はるかさま、そしてセーラーウラヌス様! つづきははる×みち(みち×はる?)小話です。 時期は二人が成人した後で、二人暮らしです。 はるかさんの設定はアニメ設定で一人称「僕」ですのでご注意を。 天空の鳥 誰もが烏のような重たい色の外套に身を包んだ人混みの中、彼女の姿は一瞬で僕の目を捉えて離さない。 こんな空港の中でも。 「お帰り。寒かっただろ?」 僕はみちるの手から瑪瑙色のスーツケースを受け取ると並んで歩き出す。 みちるは慣れた風にヴァイオリンケースだけを小脇に抱え直すと、するりとスーツケースを持たない方の僕の腕に寄り添う。 「ええ、耳が千切れるかと思ったわ。東京は暖かいわね。」 「それでそのイヤーマフってわけ?」 みちるの耳元には見慣れない白のイヤーマフ。 「寒すぎてそこら辺にあったシャネルに飛び込んで買っちゃったの。ニューヨークなのに…」 アメリカに行ってフランスのメゾンで買い物をしてしまったことに小さな唇を尖らせる。 「でも急拵えにしてはみちるに良く似合ってるよ、ソレ。」 「まぁありがとう。でもやっぱりニューヨークは春か秋よね。気候だけなら。」 そんな会話をしながら僕のベンツにスーツケースと彼女を乗せて、冬の夜空を切るように帰路につく。 高速道路の外灯が星よりも星の如く車窓を横切っていく。幾重にも。 「ブランクーシを知っていて?」 ふと、みちるが思い出したように聞いてきた。 「現代彫刻の?」 僕は少し思案して答える。美術は趣味程度にしか詳しくない。 「ええ。昨日ね、モマに行ってきたのよ。ちょっと人に誘われて。」 「人って男?女?」 ふふっ、と彼女は可笑しそうに吹き出し、 「その質問に意味はあるのかしらね、私とあなたの間で。」 なんて笑いながら片目をつぶる。 確かにそうだ。 「両方よ。とても人の良い老夫婦だったの。今回のカーネギーで私の演奏を気に入って下さって、食事もご一緒したのよ。」 「へえ、でも老夫婦でメトじゃなくてモマなんて、やっぱり日本とは趣味が違うよね。」 「メトロポリタンは足がお疲れになってしまうんですってよ。」 「成る程。」 ハンドルを切りながら一度訪れたあの美術館の広大さを思う。 作品すべてをまともに見ようと思ったら一週間は必要そうな内容だ。 「僕はモマは行ったことがないんだよなぁ。どう、良かった?」 「面白かったわよ。見応えはあるけど規模が大きすぎないから廻りやすいし…そうそう、それでブランクーシがあってね」 頭の中で記憶を手繰り寄せるが、作品のイメージがいまいちリンクしてこない。 「どういう作品だっけ?」 「私が見たのは『空間の鳥』という代表作なの。」 金属彫刻なんだけれど…と語り出すみちるは、どこかうっとりとした目で遠くに焦点を合わせた。 「曇り無く磨き上げられていて、無駄のない洗練されたフォルム…私、その展示室に入った瞬間に釘づけになってしまったのよ。他の彫刻に混ざって置いてあるにも関わらず。」 まるでみちるを見つけた時の僕のようだね、とは口には出さずに相槌をうつ。 「まるではるかみたいだった。」 「え?」 僕はびっくりして、フロントガラスに映ったみちるの瞳を見返す。 「その空間の鳥。美しくて、クールで、その空間すべてを一手に掌握してしまうような、圧倒的な存在…見た途端に頭と胸を射抜かれたように時が止まって…」 鏡になったガラス越しにみちるの視線とかち合う。 「はるかに会いたくなったわ。」 海のような深い瞳がからかうように笑ったかと思うと、その視線はすぐに窓の外へと移る。 ひとつ所に留まらないいつも通りの軽やかさ。 釣られて僕もその視線の先を追うと、紅い光の尖塔にぶつかる。 「クライスラーもエッフェル塔もいいけど、東京タワーを見ると帰ってきたって気がするわよね。」 東京のシンボルはその高さとライトアップのお陰で、高速を走りながらでも暫くは車窓から消えない。 「ぼくは」 横目でガラスの向こうの紅い光とガラスに映った碧い彼女を一緒に視界に入れながら呟く。 「ニケを見るとみちるに会いたくなったよ」 紅い尖塔にエッフェル塔の姿を重ねながら、華の都で出会った彫刻を思う。 「サモトラケのニケ?ルーヴルね。」 ガラスの中のみちるは振り返り、実像のみちるがこちらを向く。 満更でもなさそうだ。 「他のどの彫刻より優美なのに、他のどの彫刻より強さを秘めていて、厳かで壮麗で…ミロのヴィーナスもモナリザも君の美しさには敵わないけれど、ニケだけは似ているって思った。」 みちるはまたくすくす、と笑いながら 「光栄だわ。でもそれ、美奈子には言わないでおあげなさいな。」 と、数多の美術品のモチーフになる名前を戴く戦友を気遣うから、僕も釣られて吹き出した。 「言わないよ。でも、あの子はどんな彫刻や絵画よりも自分の美しさに自信を持っているんじゃないかな?」 それもそうね、とみちるも吹き出す。 「でも、ニケとブランクーシだなんて、随分と時代を隔てた取り合わせね。紀元前古代ギリシャの女神像と20世紀の現代アート。」 シートに置かれたみちるの手の甲にそっと僕の手を重ねると、みちるの視線が僕の瞳に飛び込んでくる。 「それこそ、意味を成さないんじゃないかな?僕と君の間では。」 そう言って目元を緩めると、みちるも同じ瞳になって、今度は星空を見上げる。 遠く遠い、かつての故郷の方角。 冬は他の季節より空気が透明になるけれど、東京というイルミネーションの海の中へはやはり数えるほどしか天からの星灯りは届かない。 「こんど」 瞳に星より明るい外灯の流星達を映しながら、みちるが桜色の唇を動かす。 「今度時間が出来たら一緒に行きましょうよ、あなたとブランクーシを見たいわ。」 高速を降りれば二人の部屋まではすぐだけれど、僕はもう少しこの小さな空間に二人きりでさまよって居たくて、わざとスピードを緩めながらイルミネーションの街路を進んだ。 「いいね、春か秋にきっと。今回だって、マシン整備の都合がついたら僕も行きたかったのに。」 「生憎カーネギーは待ってくれないんですもの。」 数日ぶりに会うからだろうか、さっきからみちるがやけに茶目っ気のある目で微笑む気がする。 「公演はともかく、みちるがほんの少し滞在を延ばしてくれれば明後日には僕も合流出来たのに。珍しいよね?みちるがわざわざ最終便で夜中に帰ってくるなんて。」 あら、とみちるは意外そうな声を上げると、先程から何とはなしに弄んでいたお互いの片手をすっと胸元の高さまで引き上げ、僕の手の甲へ羽のように軽い口づけを落とした。 「だって明後日じゃ間に合わなくなっちゃうじゃない?」 僕は静かにベンツを停車させて、にっこりと笑うみちると向き合う。頭にクエスチョンを浮かべながら。 みちるは空いている方の手で器用にフォックスファー付きコートのポケットから小さな箱を取り出した。 「これはちゃんと時間をつくってティファニーで買ったのよ。気に入ってもらえるかしら?」 見覚えのある色の箱を開けるとそこにはホワイトゴールドのペアリング。 シンプルながら細い流線型のデザインがスタイリッシュで特徴的だ。 「すごく綺麗だ。でも・・・?」 どうしたの?と瞳で問いかける僕をよそに、彼女はせっせと僕の左手にリングをはめてしまう。 「ぴったりね。」 そして視線を指輪から僕へと移すと、 「誕生日おめでとう、はるか。間に合って良かったわ。」 そう言って春のような笑みで僕の心を鷲掴んでしまった。 「すっかり忘れてた・・・」 「そのようね。私なんて随分無茶して帰国を早めてもらったって言うのに、もう。」 今更頬を膨らましても、君の可愛さにクラクラしている僕への媚薬にしかならないってこと、みちる分かってる? 僕は小箱に残ったもう片方のリングを取ると、みちるのしなやかな左手にはめ、その上にそっとキスを返す。さっきみちるが僕にしたように、触れるだけの。 「こんな感じなの?ブランクーシの彫刻って。」 車窓からこぼれるイルミネーションを映して輝く細いリングは、みちるの手を一層美しく見せる。 「少しね、似てると思ったわ。」 みちるの左手に、僕の左手を添わせてみる。 少し大きな僕の手がみちるの手を覆いながら、僕は身体ごと彼女に近付こうとする。 瞳を閉じ、唇を重ね・・・ることは叶わなかった。 みちるの右の人差し指が、僕の唇を制したから。 「みちる?」 「はるか、私スーツケースに向こうで買ったシャンパンを入れてあるんだけど、出来たら日付が変わる前に二人で味わいたいわ。」 今日は何もかも、彼女が一歩リードしている星回りらしい。 僕は潔く了解して、二人が何の気兼ねもなくなれる部屋へと急ぎエンジンをふかす。 「ついでに大西洋を渡ってルーヴルも行こうか。」 え?と、みちるが僕に聞き返す。 「ニューヨークでモマを見てから、その足でパリ・・・イギリスやイタリアにも寄ってさ。」 「ついでに世界一周なんてのもいいんじゃないかしら?」 「どうせなら君の誕生日にするかい?みちる。どこで誕生日を迎えたい?」 「何処だっていいわよ?あなたと二人なら。」 「じゃあとっておきのプランを考えておかなきゃね。今日のお礼に。」 冬空の下の夜風を切り裂きながら、僕らのベンツは瞬く間にガレージに到着している。 「でも今はとりあえず、」 車から手早くスーツケースを下ろし、助手席から僕と同じ指輪をはめた手をうやうやしくエスコートすると 「シャンパンと君をじっくりと味わわなくてはね。」 永遠のパートナーは僕の腕の中で頬にそっとキスをくれた。 *************** みちる様の台詞回しがなかなかしっくり来ず苦労しました・・・。 あ、モマはMoMA、ニューヨークにあるthe Museum of modern Artのことで、近現代のアートが楽しめます。 メトはMet、かの有名なメトロポリタンミュージアム♪です。 ニケと空間の鳥はMOONの個人的な趣味です。 どちらも本当に素敵なので是非機会があったらご覧ください。 パリに行くことがあったらロダン美術館もどうぞ。ロダン大好き。 PR
|
||
|
||
- トラックバックURLはこちら